まつ出版 (MBC21横浜支局)

かるたで見る戸塚

『俳句で綴る泉区郷土かるた』(まつ出版刊)より
作 小島貞雄
絵 安西春代


【焼米搗き】境川、柏尾川流域一帯
 焼米搗きというのは、春、田圃に蒔いた残りの籾を鍋で炒り、臼に入れて棒杵でよく搗き、お小食〈こじゅう〉や保存食を作り上げる作業のことで、五月の初旬、藁屋の棟に唐日扇(一八)が咲く頃、村の若い男女を中心に行われた華やかな社交行事であった。年頃の娘のいる家でこれをやると村内は言うに及ばず、近郷からも声に自信がある者、腕達者の若衆が集まり、焼米搗唄をうたいながら二臼、三臼と搗き上げ、終わりにお茶がはいって、一同会食となる。
  ♪ハアー米搗いておくれよこ若衆
     こ若衆なければお米搗けない
と宿主が唄い出せば、間髪をいれず
  ♪ハアー目出度いここの旦那様
     いつ来てもにこにこえびす顔して
と応じる、唄の上の句は「上げ」といい、声のたつ者が下句は「付け」で一同でやる。のどに自信のある者は唄の流れにより、目出度づくし地名づくし、人情ものと、夜の更けるのも忘れて先導し、会を盛り上げた。
  ♪ハアー焼米搗きたいが唄の数知らぬ
     唄の上手さんと馴染みたい
 これは口では言えない女ごころのつぶやき。
 搗き方は基本として杵3本、1人が搗いているとき、ほかの2人は臼の縁を軽く叩き、順に搗いて3回目、3回目に中を搗くようになる。人数が多いときは杵の一部に縋り、また仲間の肩に手をかけて調子をとる。この行事は大体大正年間で終わり、唄と臼だけが残った。
  ♪ハアーめでたいここり屋根棟に
     咲いてそうそ唐日扇の花が七枚


小島貞雄著『泉区郷土史[かるた解説]』より

俳句で綴る 泉区郷土かるた
【を】踊場伝説(中田町)
【と】彦坂小刑部館跡(岡津町)
【よ】横根の競馬(和泉町)
【や】焼米搗き(境川、柏尾川流域一帯)


 
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